【コラム】 インテル 対 AMD
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響き有り。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を顕す。
「平家物語」
宿命のライバル通しが戦いを繰り広げているとき、ある時期は一方が優位に立っていても、必ずもう一方が逆襲に転ずるものです。
インテル(INTC)は長年に渡ってコンピュータのCPU部門で圧倒的なシェアを誇り、ライバルは見当たりませんでした。
その状況が大きく変わったのは、AMD(AMD)が2003年に、同社初のサーバ向けCPUとなる、Opteron(オプテロン)を発表した時からです。
Opteronは処理能力と消費電力の点でインテルのサーバ向けCPUであるXeon(ジーオン)を上回り、サン・マイクロシステムズ(JAVA)、HP(HPQ)、IBM(IBM)のサーバに採用されて飛躍的にシェアを伸ばしていきました。
AMDの勢いはとどまることを知らず、2005年にはデュアルコア(*)のOpteronを投入しました。
*デュアルコア:1つのCPUパッケージ内に2つのCPUコアを集積したマイクロプロセッサ。
このデュアルコアOpteronは非常に洗練された、革新的な製品で、性能面でインテルのCPUを圧倒しました。
そして、ついにデル(Dell)のサーバにもOpteronが採用されることになったのです。デルはインテルと非常に結びつきの深い企業で、それまではインテル製のCPUしか採用していませんでした。これはインテルにしてみれば、長年付き合ってきた恋人を奪われたような思いだったでしょう。
2005年はAMDが大きく躍進した年でした。9月にはデスクトップ向けCPUの販売で、初めてAMDがインテルを逆転してトップに立ちました。
AMDにシェアを奪われたインテルは苦汁をなめ続けていました。
インテルの株価は低迷し、株主総会でも株主から厳しい質問が相次ぐ事態となりました。
両者の株価の推移を見比べてみましょう。
過去5年間のAMDのチャートです。
これを見ると、2003年から2005年の3年間に大きく株価が上昇しているのがわかります。
一方インテルの過去5年間のチャートです。
2003年から2006年中盤にかけて、株式市場全体が上昇しているのにもかかわらず、インテルの株価が低迷していたのがわかります。
この間、インテルは敗者としての屈辱を味わい、AMDは勝者としてわが世の春を謳歌していました。
しかし、インテルもただ指をくわえて見ていただけではありません。
インテルはAMDに対抗できる新製品を開発していたのです。
形勢が再び変わり始めたのは、2006年にインテルが新しい設計思想に基づいて作られたCoreマイクロアーキテクチャのCPUを発表してからでした。
新世代のインテル製CPUは性能面でもAMDのCPUを上回り、インテルは再びかつての勢いを取り戻したのです。
それでもAMDが再逆転するチャンスはまだ残っていました。
その切り札となるはずだったのが、AMDのクアッドコア(4コア)CPUのBarcelona(開発名バルセロナ)でした。
現在発売されているインテルのクアッドコアCPUは、デュアルコアを2個くっ付けただけの、いわば「間に合わせの」クアッドコアです。これに対して、AMDのBarcelonaは真のネイティブクアッドコアCPUで、最上位のXeonプロセッサを性能面で上回るとされていました。
ところが、事はAMDの思惑通りには運びませんでした。Barcelonaは2007年後半に投入される予定でしたが、技術的な問題により、量産出荷されるのは2008年まで延期されることになったのです。Barcelonaの出荷延期のニュースを受け、AMDの株価は大きく値を下げました。
2007年の1年間でインテルの株価は上昇し、逆にAMDはほぼ3分の1近くまで下落しました。
さらに、デスクトップ向けクアッドコアCPU、Phenom(フェノム)の主力製品が、2008年第1四半期から第2四半期に延期されることが発表されました。この度重なる出荷の延期は、AMDの生産能力に対する信頼を大きく損なうことになりました。
実は管理人自身、今年の2月に新しいHPのパソコン(Intel Core 2 Quad搭載)を購入したのですが、当初はAMDのPhenomを搭載したパソコンを購入するつもりでした。ところが、実際のベンチマークテストで、PhenomがインテルのCore 2 Quadに処理能力の面でも、消費電力の面でも見劣りするのを見て、結局インテル製CPUを搭載したパソコンを購入することにしたのです。
真のクアッドコアCPUであるPhenomが、間に合わせのクアッドコアであるCore 2 Quadに負けてしまうというのは、大きな期待はずれでした。
インテルの攻勢はまだまだ止まりません。
今年後半には、真打ともいうべきCPU、Nehalem(開発名ネハーレン)が登場するのです。このNehalemはネイティブクアッドコアCPUで、性能も飛躍的に向上します。さらには、オクタコア(8コア)CPUの登場も控えています。
このNehalemが登場すると、AMDの状況はさらに苦しいものとなるでしょう。
それにしても、両者の立場が1年間でここまで変わるとは、まったく予想もできなかったことです。
どうして、このような事態になってしまったのでしょうか?
一番大きな理由としてあげられるのは、AMDがネイティブクアッドコアという、技術的な洗練度にあまりにもこだわり過ぎたことでしょう。デュアルコアCPUの生産では、この方法で大成功を収めましたが、クアッドコアはやはり複雑度が違うのでしょう。
インテルはAMDに先駆けてクアッドコアCPUの量産に成功しましたが、それはインテルがデュアルコアを2個載せるという、安易ではあるが現実的な手法を選択したためです。
しかし、AMDが難しい開発にこだわったのはやむを得ないのです。インテルという巨人に立ち向かうためには、まず技術的な面で勝つことが必要だからです。それに、技術的な困難にチャレンジして、製品を開発していくというのがAMDという会社の魅力でもあるし、実際そうやって成功を収めてきたわけです。ですから、より洗練された製品を目指した上での開発の遅れであれば、致し方ないともいえます。
もっとも、株主にはそのような格好のよい言い訳は通用しないでしょうが…
では、今後AMDが再逆転する可能性は残されているのでしょうか?
これは私の個人的な意見ですが、少なくとも今年度中は難しいのではないかと思います。
もちろん長期的に見れば、再びAMDが勝者となる時もやってくると思います。今年は新しい工場もフル稼働を始め、今までインテルに差をつけられていた製造キャパシティの面でも大きな向上が見込めます。45nmプロセスルールの新CPUも予定通りに出荷されそうです。これには、IBMとの技術提携が大きな役割を果たしていたと考えられます。
そして2009年にはオクタコアCPUのMontreal(開発名モントリオール)も登場します。
いずれにせよ、ライバル同士がしのぎを削って、競争しあうのは望ましいことです。
個人的にはAMDも好きな企業の一つなので、頑張ってもらいたいと思います。
*注意
管理人は、このコラムで紹介した企業への投資を推奨しているわけではありません。投資は自分自身の判断で行ってください。
「平家物語」
宿命のライバル通しが戦いを繰り広げているとき、ある時期は一方が優位に立っていても、必ずもう一方が逆襲に転ずるものです。
インテル(INTC)は長年に渡ってコンピュータのCPU部門で圧倒的なシェアを誇り、ライバルは見当たりませんでした。
その状況が大きく変わったのは、AMD(AMD)が2003年に、同社初のサーバ向けCPUとなる、Opteron(オプテロン)を発表した時からです。
Opteronは処理能力と消費電力の点でインテルのサーバ向けCPUであるXeon(ジーオン)を上回り、サン・マイクロシステムズ(JAVA)、HP(HPQ)、IBM(IBM)のサーバに採用されて飛躍的にシェアを伸ばしていきました。
AMDの勢いはとどまることを知らず、2005年にはデュアルコア(*)のOpteronを投入しました。
*デュアルコア:1つのCPUパッケージ内に2つのCPUコアを集積したマイクロプロセッサ。
このデュアルコアOpteronは非常に洗練された、革新的な製品で、性能面でインテルのCPUを圧倒しました。
そして、ついにデル(Dell)のサーバにもOpteronが採用されることになったのです。デルはインテルと非常に結びつきの深い企業で、それまではインテル製のCPUしか採用していませんでした。これはインテルにしてみれば、長年付き合ってきた恋人を奪われたような思いだったでしょう。
2005年はAMDが大きく躍進した年でした。9月にはデスクトップ向けCPUの販売で、初めてAMDがインテルを逆転してトップに立ちました。
AMDにシェアを奪われたインテルは苦汁をなめ続けていました。
インテルの株価は低迷し、株主総会でも株主から厳しい質問が相次ぐ事態となりました。
両者の株価の推移を見比べてみましょう。
過去5年間のAMDのチャートです。
これを見ると、2003年から2005年の3年間に大きく株価が上昇しているのがわかります。
一方インテルの過去5年間のチャートです。
2003年から2006年中盤にかけて、株式市場全体が上昇しているのにもかかわらず、インテルの株価が低迷していたのがわかります。
この間、インテルは敗者としての屈辱を味わい、AMDは勝者としてわが世の春を謳歌していました。
しかし、インテルもただ指をくわえて見ていただけではありません。
インテルはAMDに対抗できる新製品を開発していたのです。
形勢が再び変わり始めたのは、2006年にインテルが新しい設計思想に基づいて作られたCoreマイクロアーキテクチャのCPUを発表してからでした。
新世代のインテル製CPUは性能面でもAMDのCPUを上回り、インテルは再びかつての勢いを取り戻したのです。
それでもAMDが再逆転するチャンスはまだ残っていました。
その切り札となるはずだったのが、AMDのクアッドコア(4コア)CPUのBarcelona(開発名バルセロナ)でした。
現在発売されているインテルのクアッドコアCPUは、デュアルコアを2個くっ付けただけの、いわば「間に合わせの」クアッドコアです。これに対して、AMDのBarcelonaは真のネイティブクアッドコアCPUで、最上位のXeonプロセッサを性能面で上回るとされていました。
ところが、事はAMDの思惑通りには運びませんでした。Barcelonaは2007年後半に投入される予定でしたが、技術的な問題により、量産出荷されるのは2008年まで延期されることになったのです。Barcelonaの出荷延期のニュースを受け、AMDの株価は大きく値を下げました。
2007年の1年間でインテルの株価は上昇し、逆にAMDはほぼ3分の1近くまで下落しました。
さらに、デスクトップ向けクアッドコアCPU、Phenom(フェノム)の主力製品が、2008年第1四半期から第2四半期に延期されることが発表されました。この度重なる出荷の延期は、AMDの生産能力に対する信頼を大きく損なうことになりました。
実は管理人自身、今年の2月に新しいHPのパソコン(Intel Core 2 Quad搭載)を購入したのですが、当初はAMDのPhenomを搭載したパソコンを購入するつもりでした。ところが、実際のベンチマークテストで、PhenomがインテルのCore 2 Quadに処理能力の面でも、消費電力の面でも見劣りするのを見て、結局インテル製CPUを搭載したパソコンを購入することにしたのです。
真のクアッドコアCPUであるPhenomが、間に合わせのクアッドコアであるCore 2 Quadに負けてしまうというのは、大きな期待はずれでした。
インテルの攻勢はまだまだ止まりません。
今年後半には、真打ともいうべきCPU、Nehalem(開発名ネハーレン)が登場するのです。このNehalemはネイティブクアッドコアCPUで、性能も飛躍的に向上します。さらには、オクタコア(8コア)CPUの登場も控えています。
このNehalemが登場すると、AMDの状況はさらに苦しいものとなるでしょう。
それにしても、両者の立場が1年間でここまで変わるとは、まったく予想もできなかったことです。
どうして、このような事態になってしまったのでしょうか?
一番大きな理由としてあげられるのは、AMDがネイティブクアッドコアという、技術的な洗練度にあまりにもこだわり過ぎたことでしょう。デュアルコアCPUの生産では、この方法で大成功を収めましたが、クアッドコアはやはり複雑度が違うのでしょう。
インテルはAMDに先駆けてクアッドコアCPUの量産に成功しましたが、それはインテルがデュアルコアを2個載せるという、安易ではあるが現実的な手法を選択したためです。
しかし、AMDが難しい開発にこだわったのはやむを得ないのです。インテルという巨人に立ち向かうためには、まず技術的な面で勝つことが必要だからです。それに、技術的な困難にチャレンジして、製品を開発していくというのがAMDという会社の魅力でもあるし、実際そうやって成功を収めてきたわけです。ですから、より洗練された製品を目指した上での開発の遅れであれば、致し方ないともいえます。
もっとも、株主にはそのような格好のよい言い訳は通用しないでしょうが…
では、今後AMDが再逆転する可能性は残されているのでしょうか?
これは私の個人的な意見ですが、少なくとも今年度中は難しいのではないかと思います。
もちろん長期的に見れば、再びAMDが勝者となる時もやってくると思います。今年は新しい工場もフル稼働を始め、今までインテルに差をつけられていた製造キャパシティの面でも大きな向上が見込めます。45nmプロセスルールの新CPUも予定通りに出荷されそうです。これには、IBMとの技術提携が大きな役割を果たしていたと考えられます。
そして2009年にはオクタコアCPUのMontreal(開発名モントリオール)も登場します。
いずれにせよ、ライバル同士がしのぎを削って、競争しあうのは望ましいことです。
個人的にはAMDも好きな企業の一つなので、頑張ってもらいたいと思います。
*注意
管理人は、このコラムで紹介した企業への投資を推奨しているわけではありません。投資は自分自身の判断で行ってください。
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